尿路感染症
尿路感染症
尿路感染症とは、尿路に細菌(主に大腸菌など)が侵入し、感染・増殖して炎症を起こしたものを総称していいます。
総称ということは、どういうことか?
「尿路」の中でも炎症を起こす部位によって疾患名や原因が細分化され、それに応じた適正な治療が必要になるということです。大きくは感染症が起こる場所によって、「上部尿路感染症(腎盂腎炎)」と「下部尿路感染症(膀胱炎、前立腺炎、尿道炎)」に分けることができます。
風邪や疲れが溜まって免疫力が落ちている時、おしっこがうまく出せない場合、おしっこを我慢し過ぎた場合などに、細菌が侵入、繁殖し発症リスクが高まります。
※発症場所により診断名をつけます。
尿路とは、からだの中で尿が作られてから外に出るまでの一連の通り道です。
尿はどうやってできるのか?その始まりは血液からスタートします。
尿が作られるまで
「腎臓〜腎盂〜尿管」「膀胱〜尿道」の尿が排出されるまでの一連の通り道を尿路といいます。
尿路感染症は、大きくは感染症の起こる場所で以下の2種類に分けられます。
主に腎臓の「腎盂」という部位、ならびに腎臓の実質で起こる腎盂腎炎が多くみられます。腎臓に細菌が感染し生じる炎症です。細菌が尿道口より進入し、膀胱、尿管、腎盂まで逆行して感染します。腎臓は膀胱よりも上流に位置する臓器ですので、発症率は膀胱炎より高くはありません。一方、高熱・吐き気などを伴い、膀胱炎より重篤になることが多くみられ、尿路感染症で入院する患者の大多数を占めます。尿管炎も少数見られますが、尿管炎だけというより、他の箇所と併せて炎症が確認されることも多いです。
腎盂腎炎(じんうじんえん)は、尿道の出口から侵入した細菌が腎盂に到達することで起こる病気です。
膀胱炎が悪化すると、腎盂腎炎になることがあります。
膀胱炎では発熱がありませんが、腎盂腎炎は発熱し、腰が痛くなります。
腎盂腎炎になってしまった場合、入院治療が必要となることがあるため、背中や腰の痛み、発熱などの膀胱炎とは違うと感じる症状がある場合は、すみやかに受診してください。
主に、膀胱炎・尿道炎が多くみられます。外尿道口(おしっこの出口)から大腸菌をはじめとした原因菌が入り、感染・繁殖し炎症を起こします。繁殖する場所により診断名がつきます。
膀胱なら膀胱炎、前立腺なら前立腺炎、尿道なら尿道炎となります。
膀胱炎は、尿道から侵入した大腸菌や腸球菌が膀胱に感染し炎症を起こすことにより発症します。
20代の方から妊婦、更年期、高齢者まで幅広い年代の女性の多くがかかる傾向にあります。
男性は尿道が長いため、膀胱炎はなりにくく尿道炎にかかる傾向があります。
前立腺炎は、膀胱炎と同様に大腸菌をはじめとした細菌が尿道を通って前立腺で炎症を起こすことにより発症します。男性特有の前立腺という臓器で起こり、中でも働き盛りの若年層に多くみられます。長時間の労働はからだに負荷を与え免疫力が低下しますので、こういったタイミングで発症する場合が多いので注意しましょう。
尿道炎とは、一般的には男性に多く、性行為感染を主とする細菌(クラミジア、淋菌など)が尿道に感染することにより引き起こされる病気です。性風俗店の利用などで感染する場合が多いといわれていましたが、最近は身近なところでの無症状の感染者も増えており、幅広い年齢層、患者層で感染が確認されています。
非クラミジア性非淋菌性尿道炎では、クラミジアと淋菌が検出されず、大腸菌・腸球菌・マイコプラズマ・ウレアプラズマなどの細菌、ウイルス、トリコモナスなどの原虫などが原因となります。
医学的に尿路感染症は、その病態の分類として「尿路系基礎疾患」があるか、ないかで「単純性」と「複雑性」に分類することができます。
【補足】
急に発病して、症状が強いものを急性尿路感染症、徐々に発病して症状はそれほど強くないものを慢性尿路感染症といいます。
尿路感染症を全体的にみると女性がなりやすい疾患といえるでしょう。
(補足:膀胱炎や尿路感染症など、疾患ごとに傾向も分かれていきます。)
一般的には、幼少期、性的活動期(20~30代)、高齢者に多くみられ、【性的活動期と中高年】となるタイミングの女性に増加傾向のピークがみられます。
【主な理由】
・男性と女性では尿道の形や長さに違いがあります。
女性の尿道口は男性に比べて肛門や膣に近い場所にあるので、腎盂腎炎や膀胱炎の原因になる細菌が尿道口に付着しやすくなっています。また、男性に比べ尿道が短いことも細菌が侵入しやすい要因となります。
そのため、男性より女性のほうが尿路感染症になりやすいとわれています。
*どんな人が尿路感染症になりやすい??
尿路感染症の起こる場所によってみられる症状も傾向が異なってきます。
主にみられる症状を部位別にご案内します(尿道・膀胱・腎臓)。
以下のような症状があります。
症状を感じる部位も、尿道の奥や尿の出口が痛いなどさまざまで、人によっては症状がまったく出ないケースもあります。
以下のような症状があります。
発熱はありません。
非常に強い炎症により、膀胱がひどくただれているときには、尿に血が混じること(血尿)もあります。
以下のような症状があります。
腎臓は背中側で背骨の左右にあり、腎臓部分の痛みと発熱があります。
尿路感染症は、おしっこの出口(外尿道口)から入った細菌が、尿路を逆行して繁殖することを要因として発症します。
急性単純性尿路感染症では、以下の細菌が原因菌として挙がります。
によって起こります。
この大腸菌は、食中毒の原因とされるO-157とは違う種類の大腸菌です。
また、慢性複雑性尿路感染症では、以下の細菌が原因菌として挙がります。
大腸菌は抗菌薬(抗生物質)で殺菌されやすく治療効果が期待できますが、慢性複雑性尿路感染症の原因の70%を占める弱い細菌は、抗菌薬によって殺菌されにくく、治りにくい傾向にあります。
以下のような症状が伴う場合には注意が必要です。
膀胱炎や腎盂腎炎の主な原因は細菌感染です。細菌が外尿道口(おしっこを出す出口)より侵入し、細菌が尿道から膀胱、さらに尿管を通って上の位置にある腎盂という部位にまで達した腎盂腎炎では、血液中に細菌が侵入すると敗血症となってしまい命に関わることもあります。
そのため、症状が現れたら早急に病院を受診するようにしましょう。
健康な方でも尿道の出口付近には細菌や白血球が存在することがあります。
尿検査は、出始めの尿は便器に流し、途中からの尿を検査用のコップに入れることが大切です。しかし、尿の出口の細菌や白血球が混じってしまう場合には、細い管(カテーテル)を直接膀胱まで入れて膀胱内の尿を採取し調べることもあります。
尿を遠心分離器にかけ、その沈殿物を顕微鏡で見て、白血球や細菌があるかどうかを調べます(尿沈渣検査)。
さらに、どのような細菌が存在するのかを特殊な培地で培養して調べます(尿細菌培養検査)。
顕微鏡の検査(尿沈渣検査)は、急げばその日のうちに結果がわかることもあります。
尿細菌培養検査は3~5日ほどお時間がかかります。
女性の方へ
月経中や帯下(おりもの)が多いとき、膣が萎縮している場合には、正しい結果が出ないことがあります。気になる点がございましたら、当院スタッフへお声がけください。
膀胱内の残尿量を測定します。また膀胱の容量(大きさ)を確認します。「容量減少の所見」や膀胱結石・がんの確認や他の疾患の可能性を除外していきます。
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
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尿検査(尿定性・沈渣検査) ※判断料含む |
約90円 | 約170円 | 約260円 |
腹部エコー検査 | 約530円 | 約1,060円 | 約1,590円 |
(税込表記です)
治療期間は膀胱炎で3~7日間、腎盂腎炎で7~14日間とされています。
症状が3日ほどでよくなる場合もありますが、処方された抗生物質はすべて飲み切ってください。
もし、服用中のお薬で気分が悪くなることがあれば、当院医師へご相談ください。
(※症状等により変わりますので、参考になれば幸いです。)
患者さまへ
また、尿を我慢して膀胱にたくさんの尿が溜まってしまうと、細菌はその尿の中で増えやすくなりますので、おしっこは我慢せずに出してください。
感染症の原因菌の増殖を抑え、殺菌するお薬
一般名(お薬の成分) ※ジェネリック医薬品のお名前にもなります |
商品名(例) | 服用期間(目安) | |
---|---|---|---|
ニューキノロン系抗生剤 | レボフロキサシン シプロフロキサシン シタフロキサシン |
クラビット錠 シプロキサン錠 グレースビット錠 |
3日 |
セフェム系抗生剤 | セファレキシン セフカベンピボキシル |
ケフレックスカプセル フロモックス錠 |
5~7日 |
ペニシリン系抗生剤 | クラブラン酸アモキシシリン | オーグメンチン配合錠 | 7日 |
ホスホマイシン系 | ホスホマイシン | ホスミシン錠 | 2日 |
ペネム系 | ファロペネム | ファロム錠 | 7日 |
ST合剤 | スルファメトキサゾール・トリメトプリム | バクタ配合錠 | 3日 |
痛みや炎症を抑えるお薬
一般名(お薬の成分) ※ジェネリック医薬品のお名前にもなります |
商品名(例) | 服用期間(目安) |
---|---|---|
ロキソプロフェンナトリウム(錠剤) | ロキソニン錠 | 1日~2日(痛みを感じるとき) |
アセトアミノフェン(錠剤) | カロナール錠 | 1日~2日(痛みを感じるとき) |
ジクロフェナクナトリウム(錠剤) | ボルタレン錠 | 1日~2日(痛みを感じるとき) |
猪令湯(細粒、漢方薬) | 猪令湯エキス細粒 | 3~7日間程度 |
尿路感染症は、細菌が繁殖した場所によって分類されます。一般的に皆さまが「膀胱炎」というと膀胱に細菌感染を起こした際に診断されるものを指すことが多いと思います。
しかし、膀胱炎の中にははっきりとした原因が特定されていない「間質性膀胱炎」と呼ばれる疾患があります。
細菌感染が原因でないことは判明しており、中高年以降の女性に多くみられます。
症状も似ていますが、検査をしても尿から細菌が検出されず、尿そのものには異常がありません。排尿時よりも膀胱に尿がたまったときに痛みが生じやすいという特徴があります。
症状が似ていることから、急性膀胱炎などと診断されて抗生物質が処方されるケースもありますが、原因が細菌感染ではないので効果がありません。
一般内科では診断が難しく、泌尿器科専門施設の受診が望まれます。
尿路感染症のうち腎臓(腎盂)で起こる「腎盂腎炎」では38度以上の発熱がみられことがあります。風邪と勘違いして尿検査等をしない場合に発見が遅れて重篤化し、入院加療が必要となるケースもございます。泌尿器科を受診する際に「熱っぽい」など、関連症状がある際は医師へ必ず伝えましょう。
尿路感染症について、明確に罹患している患者数は国や各学会での報告はございませんが、年間で約10万人の患者さまが尿路感染症で入院しています。90歳以上では100人に1人です。比較的重篤化することがない膀胱炎は泌尿器科クリニックの外来で対応可能であり、入院するケースは少ないのですが、一方で「腎盂腎炎」は高熱など症状が重く、重篤化する場合もあるので入院治療が必要となることがあり、尿路感染症の入院患者の大部分を占めています。