腎盂腎炎|なりた泌尿器科・内科クリニック|千葉県流山市の泌尿器科専門医

腎盂腎炎

腎盂腎炎|なりた泌尿器科・内科クリニック|千葉県流山市の泌尿器科専門医

腎盂腎炎とは

腎臓とは:腎盂腎炎のお話の前に…

腎臓は、血液中の老廃物や有害物質をろ過しておしっこ(尿)を作り、外に出す(排泄する)役割があります。腎臓実質で作られた尿が、まず流れ出て始めに集まる部位を腎盂(じんう)といいます。

腎盂腎炎とは

腎臓で作られた尿が流れてきて集まる腎盂や、その周囲組織が細菌に感染して炎症が起きた状態を腎盂腎炎といいます。

腎盂という部位は、通常無菌状態です(通常は菌類がいない環境)。
原因のほとんどは、おしっこの出口(尿道口)から侵入した細菌が、尿道、膀胱、尿管へと尿の流れ道=尿路をさかのぼって腎盂に達して炎症を起こします(逆行性感染)。
腎盂腎炎は膀胱炎の後に起こることが多く、多くは左右対にある腎臓のうち、片方に起こります。

女性の方へ

女性は尿道が短く、大腸菌などが存在する肛門と距離が近いため、尿道口から細菌が侵入しやすいと言われています。結果、膀胱炎や腎盂腎炎の罹患率は男性よりも女性に多くなります。
大部分の方は抗生物質(抗菌薬)による治療で治癒しますが、細菌が血流に乗って全身に広がってしまうと、命に関わるほど重症化する場合もあるため注意が必要です。

患者さまへ

腎盂腎炎は、感染症の中で「肺炎」についで入院患者数が多い感染症です。
つまり、入院が必要な程、高熱など症状も重篤化しやすい病気ということです。
一方、ほとんどが膀胱炎など、尿道から侵入して段階的に登ってくる感染症の発展形というイメージですので、早い段階で泌尿器科クリニックを受診し治療に専念いただければ防げる疾患ともいえます。

なりやすい人

「腎盂腎炎」になりやすい人として次のようなものが挙げられます。

女性

女性は男性より腎盂腎炎になる頻度が高いとされています。
女性の尿道は膣や肛門に近接していることや男性に比べて尿道が短いことから細菌が膀胱内に侵入しやすいことが理由として挙げられます。

尿路の閉塞

前立腺肥大症や尿路結石などが原因となり、おしっこの通り道(=尿路)が閉塞してしまうと、尿の流れが鬱滞します。すると、細菌が増殖しやすくなることで、腎盂腎炎になりやすいことが分かっています。

免疫力の低下

がんや糖尿病など免疫力が低下する病気では、細菌に感染しやすくなるため、腎盂腎炎にかかりやすくなります。
また、臓器移植後や免疫疾患で、免疫抑制剤を内服している場合も免疫力の低下から腎盂腎炎を発症する頻度が高くなります。

神経因性膀胱

神経障害によって尿意や排尿に障害が生じた状態の総称を、神経因性膀胱といいます。
神経因性膀胱の場合、残尿が多くなり、細菌が増殖しやすい環境が続き、膀胱の慢性感染を生じやすく、結果、腎盂腎炎も起こしやすくなります。

膀胱留置カテーテル

長期間、膀胱留置カテーテルを使用することによって、尿路感染が起きやすくなり、不適切な管理では腎盂腎炎を引き起こす場合があります。

よくみられる症状

腎盂腎炎には、急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎があります。
同じ腎盂腎炎でも、症状は大きく異なります。

急性腎盂腎炎

主に尿道から侵入した細菌感染による急性腎盂腎炎では、非常に強い炎症反応が生じます。
膀胱炎でも出る排尿時の痛み、頻尿、残尿感、尿の濁りなどの症状に加え、発熱や全身のだるさ、悪寒戦慄、腎盂腎炎の特徴である背中や腰の痛みなどの症状があらわれます。
また、吐き気や嘔吐などの消化器症状が出ることもあります。
膀胱炎など尿路全体の炎症を伴うことが多いですが、腎臓にまで細菌が達した腎盂腎炎は膀胱炎や尿道炎などより重症で、悪寒や震えがくるほどの高熱が特徴とされています。
多くは抗生物質(抗菌薬)をはじめとする適切な治療で治りますが、早期に適切な治療を行わなければ、炎症が全身に広がって敗血症という状態になります。
敗血症になると、急激な血圧低下や多臓器不全を起こし、生命が脅かされるため、このような症状があれば早めに受診が必要です。
また、結石や腫瘍が誘因となっている場合には、尿の量が少なくなったり血尿がみられたりすることもあります。

慢性腎盂腎炎

慢性腎盂腎炎は比較的症状が軽く、微熱や長引く食欲不振、倦怠感などが主な症状です。
徐々に腎臓の機能が低下することで、尿を濃縮する能力が低下し、夜間の多尿や尿の色が薄くなるなどの症状もあらわれます。
まったく自覚症状のない場合もありますが、ときには強い症状が出ることもあります。
何度も繰り返すうちに腎機能が低下することもあります。
自覚症状が少ないため気づかれないことも多く、治療せずにいると慢性腎不全に移行することがあり注意が必要です。

腎盂腎炎の原因とは

腎盂腎炎は、尿道口周辺の細菌が、尿道口から尿道を通って腎臓まで達してしまうことで発症します。
腎盂腎炎の原因である細菌感染で、もっとも多い病原菌は大腸菌です。
通常は、細菌が入っても尿とともに体外に排出されたり、細菌に対しての免疫機能が働いたりしますが、疲労やストレス、妊娠中などで抵抗力が低下している場合、腎盂腎炎になることがあります。

女性の腎盂腎炎について

女性 骨盤臓器

女性の場合、原因菌はほとんどが大腸菌といわれています。
男性に比べて女性は尿道が短く、尿道口から細菌が入りやすいため、腎盂腎炎になりやすいとされています。とくに、性行為や出産時などは菌が入りやすいため、20〜30代女性に多く発症します。
また、加齢による筋力低下で、尿を最後まで出し切れなくなることで感染しやすくもなります。

男性の腎盂腎炎について

男性 骨盤臓器

男性は陰茎があり尿道が長いため、外部からの感染はほとんどありませんが、尿路のほかの病気によって尿が停滞しやすくなることで起こります。

腎盂腎炎を併発する要因として、他に次のようなものが挙げられます。

  • 尿路通過障害(結石、腫瘍、前立腺肥大など)
  • 尿道カテーテル留置(膀胱留置カテーテル)
  • 免疫力の低下(糖尿病、ステロイド治療、抗がん剤治療など)
  • 解剖学的異常(馬蹄腎、膀胱尿管逆流症など)

急性腎盂腎炎はどの誘因でも起こる可能性がありますが、慢性腎盂腎炎は主に解剖学的異常が原因として発症します。

受診のタイミング

受診のタイミング

腎盂腎炎は、前兆に気付きにくい病気です。
過去に腎盂腎炎を経験していて、似た症状がある場合は、すぐに受診した方が無難とされています。
腎盂腎炎を経験したことのない人の場合は、受診の適切なタイミングを図るのはさらに難しく、少なくとも発熱や悪寒、腰背部痛の症状が強くなってきたときには腎盂腎炎かもしれないと考えて速やかに受診することが望ましいです。
腎盂腎炎は進行すると、細菌が血液の中に侵入する菌血症を起こすなど、対応が遅くなるほどに状態が悪くなります。
状態が悪化すると、治療が長引くこともあります。
腎盂腎炎に限った症状ではありませんが、発熱や悪寒戦慄、腰背部痛などの症状がある場合、他に緊急性の高い病気を発症していることがありますので、一度検査が必要です。

腎盂腎炎の検査・診断方法

当院で行う検査

問診票

問診でお話をおうかがいし、症状や背景を確認し腎盂腎炎が疑われた場合、必要な検査を検討し以下のような検査を行います。

1.尿検査(尿定性・尿沈渣)

検尿カップ

尿への細菌の混入、尿中の白血球数などを調べます。
また、尿培養検査を行うことで、腎盂腎炎の原因菌を特定し、患者さまに合った抗菌薬の選択を決定します。

2.採血(血液検査)

採血

炎症反応の程度と腎機能の状態を評価します。
敗血症が疑われる場合には、血小板数や血液凝固機能検査などが治療方針を決定するうえで重要な参考所見となります。

3.エコー検査(腹部超音波検査)

エコー検査(腹部超音波検査)

腎臓は、超音波で観察しやすい臓器です。
超音波検査は簡便に行える画像検査のため、腎盂腎炎が疑われる場合は超音波検査を行います。
尿路通過障害が原因の場合、腎盂の拡張や尿管の閉塞などを確認できます。
慢性の場合は、腎臓の萎縮や腎杯の拡張などが確認できます。

4.CT検査(※必要に応じて、連携病院にて実施します)

一般的な単純CT検査や、腎機能が正常であれば造影剤を用いた造影CT検査が行われます。腎周囲脂肪織の乱れを認めることが多く、尿鬱滞の所見である腎盂の拡張の程度(水腎症)や尿管結石の有無、位置・大きさ、解剖学的な異常の有無などを詳しく調べることが可能です。

当院の検査費用の目安

  1割負担 2割負担 3割負担
尿検査(尿定性・沈渣検査)※判断料含む 約90円 約170円 約260円
血液検査(採血)※判断料・手技料含む 約600円 約1,200円 約1,800円
尿培養検査 ※判断料含む 約320円 約640円 約960円
薬剤感受性検査 約170~330円 約340~660円 約540~990円
腹部エコー検査 約530円 約1,060円 約1,590円

(税込表記です)

  • 加入している健康保険の種類により若干異なります。費用はあくまで目安の金額です。初診料・再診料、診察料や処方料などは別途請求となります。

診断について

発熱や腎臓の部分に痛みがあり、尿検査で尿の中に白血球があれば腎盂腎炎と診断します。腎盂腎炎が疑われる場合、左右の背中を叩きます。
これにより右だけが痛ければ右の腎盂腎炎、両方であれば両側腎盂腎炎といったような診断がされます。

治療について

腎盂腎炎の治療は、抗菌薬を使用し、原因となる細菌を排除していく治療が基本です。

軽症の場合は、内服の抗菌薬を処方しますが、中等度や、重症になると注射や点滴の薬剤を用い、場合によっては入院が必要になります。

腎盂腎炎の診断がついたら、想定される幅広い原因菌に効くような薬で治療を行います。
また、尿細菌培養検査、感受性検査の結果により、必要であれば、原因菌に対してとくに効果のある別の抗菌薬に変更します。
別の泌尿器の病気などがあれば、その治療も併せて行います。

患者さまへ

内服の抗菌薬による治療は、一定の期間に定められた量の薬を服用しないと十分な効果が得られません。
そのため、症状が治まって服用をやめてしまうと、そのまま菌が体に残ったり、再び増えてしまったりすることもあります。
処方された薬は、医師の指示に従って必ず飲み切るようにしてください。

当院で処方する主なお薬

【抗生物質】感染症の原因菌の増殖を抑え、殺菌するお薬

  一般名(お薬の成分)
※ジェネリック医薬品のお名前にもなります
商品名(例) 服用期間(目安)
ニューキノロン系抗生剤 レボフロキサシン
シプロフロキサシン
シタフロキサシン
クラビット錠
シプロキサン錠
グレースビット錠
3日
セフェム系抗生剤 セファレキシン
セフカベンピボキシル
ケフレックスカプセル
フロモックス錠
5~7日
ペニシリン系抗生剤 クラブラン酸アモキシシリン オーグメンチン配合錠 7日
ペネム系 ファロペネム ファロム錠 7日
ST合剤 スルファメトキサゾール・トリメトプリム バクタ配合錠 3日
  • 注意:人によっては抗菌薬のタイプがからだに合わず「下痢」症状がみられることがあります。その際はお薬の変更が必要な場合もございますので、当院医師へご相談ください。

関連する病気はあるか

「腎盂腎炎」に関連する病気として次のようなものが挙げられます。

前立腺肥大症

前立腺とは

前立腺は、男性にしかない生殖器の一つです。
膀胱の出口で尿道を取り囲むように存在しており、精子に栄養を与えたり、運動能力を高めたり、保護したりする役割のある前立腺液を作っています。

前立腺肥大症とは

前立腺肥大症は、この前立腺が大きくなることで、尿道や膀胱を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。

通常は、例えると「クルミ」くらいの大きさですが、肥大すると卵やみかんほどの大きさになります。
前立腺肥大症は、良性の疾患で、進行して悪性の前立腺がんに変化することはないとされています。前立腺がなぜ肥大するかは、今の段階でははっきりと解明されていません。

40歳が分岐点

前立腺肥大症は、40歳頃を起点として、年齢が上がるにつれて患者数が増えていることから、加齢によって男性ホルモンの働きに変化が生じ、性ホルモン全体のバランスが変わることが主な原因ではないかと考えられています。

前立腺肥大症が進行すると症状が悪化します。
自覚症状に加え、腎機能に影響が出たり、自力で排尿できなくなったりすることもあります。
前立腺が大きいと、自力で膀胱内の尿を全部出しきれなくなるため、膀胱に尿が溜まっている時間が長くなります。
その残った尿に細菌が感染し、前立腺だけでなく、急性腎盂腎炎・精巣上体炎・急性前立腺炎など、周りの臓器に感染症が起こります。

膀胱尿管逆流症

腎臓で作られた尿は、腎臓下部の腎盂から尿管を通って膀胱へと流れていきます。
正常では尿管の出口である尿管口には逆流防止弁の仕組みが備わっており、一度膀胱に溜まったおしっこ(尿)が尿管へ逆流し腎臓へ再度達することはありません。

しかしこの尿管口の異常で膀胱の尿が腎臓へ逆流する病気があります。
これを膀胱尿管逆流症(VUR; vesicoureteral reflux)といいます。
胱尿管逆流症は、膀胱内の細菌が容易に腎臓まで到達します。
そのため、通常は膀胱炎で治癒するものが、逆流があると腎臓まで細菌が達して腎盂腎炎といわれる腎臓の感染症を起こしやすくなります。
この腎盂腎炎を繰り返すと、腎臓の組織が破壊され、腎機能の低下を引き起こすこととなります。

よく間違われる病気とは

「腎盂腎炎」に間違われる病気として次のものが挙げられます。

急性前立腺炎

急性前立腺炎は、前立腺に細菌が感染した尿路感染症です。
高熱、悪寒戦慄、尿意切迫感、頻尿、排尿痛、残尿感、排尿困難感、「袋、玉」(陰のう、精巣)と肛門の間の「会陰」の痛み、血尿がでるなどの症状をきたします。
放っておくと、菌血症を発症し、重症化して生命を脅かす危険もあり、速やかな治療が必要です。
抗生物質での治療に加え、十分に水分を摂り、尿と一緒に細菌を排出する、ゆっくりと休むなど十分な療養が必要です。
自転車やバイクでの前立腺への刺激で増悪します。
また、アルコール摂取は控えてください。

急性胆管炎

急性胆管炎は、胆汁の通り道である胆管が、結石や腫瘍で塞がったり狭くなったりすることで起こる病気です。
高熱、腹痛、頭がボーッとする、すっきりしないなどの症状があります。
胆汁の流れをよくすることで改善します。主に内視鏡での専門治療が必要な場合が多く、放っておくと、菌血症を発症し、重症化して生命を脅かす危険もあるため、医療機関への受診をお勧めします。

尿路結石

尿路結石とは、腎臓でできた結石が尿管に落ちてきた状態の病気です。
腰や背中の痛み、初期症状は片側の腰の痛み、腹痛などの症状があります。
10mm未満の結石は、自然排石する可能性があるので水分を十分にとって尿で結石を押し流すことが大切です。
痛みは相当強いですが排石するまでは、鎮痛薬を使用し痛みを抑えながら排石を待つしかありません。
尿路感染を併発すると、緊急処置が必要となる場合があるためアルコール摂取は控えてください。

水腎症

通常、腎臓でつくられた尿は、腎臓下部の腎盂から尿管を通って膀胱へと流れていきます。しかし、何らかの原因により尿管がつまってしまい、尿がうまく流れなくなってしまうことがあります。これにより、腎盂から尿管にかけての部分が拡張することを水腎症といいます。
症状として、背中の痛みがあります。
通常、左右どちらか片方のみであれば、すぐに生命に関わる深刻な状態になることはあまりありませんが、治療や診断には医療機関での受診・検査が必要です。「症状が続く」「悪化する」など、何か気になる症状がある場合は、早めにご相談ください。

国内患者数

尿路感染症について、明確に罹患している患者数は国や各学会での報告はございませんが、年間で約10万人の患者さまが尿路感染症で入院しています。90歳以上では100人に1人です。膀胱炎など、比較的重篤化することがない感染症は泌尿器科クリニックの外来で対応することが多いのですが、高熱など症状が重く、重篤化しやすい「腎盂腎炎」は入院患者数として多くなります。

  • 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 研究報告を参照しております。

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