膀胱炎
膀胱炎
膀胱とは:膀胱炎のお話の前に…
膀胱は、やわらかく伸縮性のある筋肉と粘膜層でできたおしっこの貯蔵庫です。袋状でおしっこが溜まるにつれ伸びて広がり300ml~500mlほどの容量です。溜まった尿が一定の容量を超えると尿意を感じる仕組みとなっており、膀胱が収縮することでおしっこを体外に出すことができます。
膀胱炎とは
膀胱炎とは、おしっこの出口(外尿道口)から入り込んだ細菌が尿の通り道(尿道)を通って膀胱で繁殖し、膀胱の内側の粘膜に炎症を起こす病気のことです。
膀胱炎は、ほとんどの場合、大腸菌をはじめとした大腸・直腸などに住んでいる腸内細菌が原因菌であることが多く、これらの細菌が尿道から侵入して、膀胱で増殖することによって起こります。
また、数は少ないですが以下を要因とする場合も考えられます。
その他、膀胱炎を発症する背景
上記など原因はさまざまです。
とくに「疲れがたまり免疫力が落ちる」状態では、膀胱の中の細菌も増えやすくなるため、膀胱炎の発症リスクも高まるといえます。
膀胱炎には、実はいくつか種類があります。
分類としては①単純に原因となる細菌がきっかけで起こるものと、②尿路系の基礎疾患があり、その影響で膀胱炎が発症するタイプに分けられます。
単純性膀胱炎は一般的に「膀胱炎」といわれているタイプの膀胱炎です。
細菌が原因で起こる感染性膀胱炎で、基礎疾患のない女性がもっとも起こりやすいタイプです。男性ではまれにみられる程度です。
起因菌としては大腸菌含む腸内細菌がもっとも多いと言われています。
女性の方へ
以下のような状態は免疫力の低下など、膀胱炎が発症しやすくなりますので注意してください。
また、妊娠や性交渉、月経が誘因となって発症することもあります。
単純性膀胱炎の症状は、急激に強い症状として現れることが多く、頻尿、排尿痛、残尿感などがあります。
排尿痛は、排尿終わりに痛みが強いことが特徴的です。
複雑性膀胱炎は、尿路や全身の基礎疾患が原因で起こる慢性的な膀胱炎です。
単純性膀胱炎とは異なり、症状は比較的軽い症状が多いですが、膀胱炎の症状を抑えても原因となる基礎疾患の治療は根本的な原因を解決しない限りは再発リスクがあります。
主な要因は以下が考えられます。
複雑性膀胱炎は、これら基礎疾患を改善しなければ、完全には治癒しません。
そのため、単純性膀胱炎と比べて、基礎疾患があるかどうかが非常に重要です。
症状はないか、あっても弱い場合が多いですが、急に症状が強まったり、発熱や腰痛があったりする場合には要注意です。
気になる方は、泌尿器科クリニックへの受診をお勧めします。
間質性膀胱炎は、膀胱の間質という部分に慢性的な炎症がみられるタイプの膀胱炎です。
膀胱粘膜の下層にある間質や筋層に炎症が拡大している状態です。膀胱の筋肉が萎縮している状態のため、膀胱におしっこ(尿)がたまると痛み(膀胱痛)を引き起こし、おしっこを出す(排尿)と、痛みが解消されます。
膀胱痛以外では、知覚過敏、頻尿、尿意切迫感などの症状がみられることもあります。
間質性膀胱炎は、はっきりとした原因がいまだ解明されていないタイプの膀胱炎です。
そのため症状を緩和させる治療を行います。
症状が似ていることから急性膀胱炎などと診断されて抗生物質が処方されるケースも少なくありませんが、原因が細菌感染ではないため効果はありません。
間質性膀胱炎は、原因不明のため完治は難しいものの、症状を軽減させるための治療方法がある程度確立されています。
「近隣に泌尿器がない」「恥ずかしさもあり、受診しづらい」方は、一度当院へお問い合わせください。専門クリニックがない場合や、女性ではとくに相談しづらい方も多いので当院へご相談いただけましたら幸いです。
当院の診療体制について
真菌性膀胱炎は、一般的に多くみられる膀胱炎が大腸菌などの細菌であることに対し、真菌(かび)の感染によって炎症が起こる膀胱のタイプです。カンジダ属真菌によるものが多いです。
出血性膀胱炎は、血尿の症状がみられるタイプの膀胱炎です。微熱がみられる場合もあります。
大人よりもこどもに多く、膀胱の一部ではなく全体から出血がみられる特徴があります。
ウイルスや細菌の感染、アレルギー、抗がん剤、放射線などが原因で引き起こされます。
血尿は数日で改善に向かい、尿検査でも約10日で血尿がなくなることが多いと言われています。安静や水分摂取によりほとんどの場合は自然治癒するとされていますが、血尿の程度が極めて重篤な場合は、入院治療が必要になる場合があります。
健康な方でも誰にでも皮膚に雑菌は付着しており、いくらキレイにしているつもりでも私たちの周りにはどこにでも無数の雑菌・細菌がいます。そのため、赤ちゃんから高齢者、老若男女誰でも膀胱炎になる可能性はあります。
とくに外陰部の周りには雑菌が多く付いており、ストレスや疲れ、風邪等で免疫が落ちているときには雑菌が膀胱の中に侵入して繁殖、感染することで炎症を起こし、膀胱炎が発症します。
膀胱炎は女性の約半数の方が、生涯に一度はかかるといわれるほど女性が罹りやすい病気です。とくに20~40歳の女性に多く、その年代では20~35%の女性が膀胱炎になるといわれています。
実に20~40歳の女性では、4人に1人がなる泌尿器科疾患なのです。また、1人の女性が一生のうちに1回~2回は膀胱炎にかかるといわれています。
女性にとっては病気の性質上、人に言いづらいため、「受診を敬遠されがち」な傾向にあります。結果、「受診のタイミングが遅れてしまう」ことがあります。
膀胱炎のほとんどは、お薬の服用によって比較的短期間で治まるため、排尿時に何らかの違和感を覚えたら、早めに受診することが大切です。
(3日~4日を目安に症状の改善が見込めます)
女性は、大きく2つのからだ(構造)のつくりの違いにより、男性より膀胱炎になりやすいのです。また、女性特有の生活背景も要因となります。
女性は、尿の出口と細菌が付着している肛門や膣の前壁までの距離が短いので大腸菌などの原因菌が尿の出口(外尿道口)に細菌が付着し尿道へ侵入しやすい環境にあります。そのため尿道を通って膀胱へ侵入し感染・発症するリスクが高いのです。
尿道の長さが男性と比べて短いので、女性の方が入り口から膀胱までの距離が短い分、細菌が膀胱にたどり着きやすく感染・発症リスクが高いと言われます。
男性では男性器の長さの分、尿道も長いため、細菌が侵入してもおしっこを出す際に一緒に流るため、感染しにくいのです。
尿道の長さ
女性3~4cm程度(尿道の長さは男性の5分の1)
男性15~20cm程度
女性患者さまの診察中、問診の中で膀胱炎の症状(排尿時痛・頻尿・尿のにごり)の他に、おりもの量が多い、色味が変だと感じている方がいらっしゃいます。
この場合、患者さまは婦人科で相談する内容と思い、泌尿器科ではお話しされない方が多いです。
ですが、実は上記のように「膣炎」を起こした状態ですと、膀胱炎を治療しても原因となる膣炎を治さないと膀胱炎が再発するリスクがあります。膣炎と膀胱炎の原因となる菌は同じである場合が多いためです。
また女性では、生理用ナプキンを使用するため、膣周りのデリケートゾーンとおしり(肛門)周辺に大腸菌や常在菌が尿道へ入り、発症するきっかけとなりますので、交換する意識は大切です。
以上のような理由があり、女性は男性に比べて膀胱炎になりやすいのです。罹患率は女性の方が男性に比べて5倍以上といわれています。
膀胱炎では、「頻尿」「排尿時痛」「尿のにごり」が代表的な症状としてみられますが、その他にも残尿感や血尿などがみられる場合があります。
膀胱炎は、症状でみると①急性膀胱炎と②慢性の膀胱炎に分けられ、このタイプの違いにより症状の出方や、みられる症状も異なります。
急性膀胱炎は、強い症状が急激に出てくるタイプの膀胱炎です。
主に以下のような症状がみられます。
排尿時痛では、とくに排尿の終わりにしみるような強い排尿痛がみられます。このような場合には膀胱炎が強く疑われますので、泌尿器科クリニックへの受診をお勧めいたします。
また、おしっこの後に直ぐトイレに行きたくなる、残尿感、血尿、尿の色が濃いなどの症状が現れることもあります。
慢性膀胱炎は、比較的軽度な症状で急性膀胱炎のような強くてわかりやすい症状が出ることは珍しいです。進行するまで自覚症状がなく、ゆっくりと進行するタイプの膀胱炎です。
炎症がかなり悪化すると以下の症状がみられます。
患者さまへ
膀胱炎により頻尿、残尿感、白濁尿や血尿、排尿時の痛み、下腹部の痛みといった症状が現れます。この症状がみられた状態を放置すると、細菌が膀胱からさらに尿路を逆流していき、膀胱よりも上に位置する腎臓に達すると、高熱をともなう腎盂腎炎といった合併症を引き起こすことがあります。
膀胱炎を経験したことのある方の中には、繰り返す膀胱炎の症状に悩まれている方もいらっしゃいます。
繰り返す原因として、主に以下が挙げられます。
薬の効き目が悪い、発症しやすい生活習慣がある、尿路の異常・病気や他の病気が隠れているなどさまざまな要因が挙げられます。
膀胱炎は基本的に細菌感染が原因で発症しますので、主な治療は抗菌薬(抗生物質)を服用し、原因菌を殺菌することになります。
お薬の効き目が悪い場合とは、原因菌と抗菌薬の相性が悪い場合などを指します。
菌の種類によって効果がある抗生物質の種類は変わってきますし、最近では、抗生物質に耐性をもつ(=効きづらくなること)菌も増えています。
十分な効果が得られないと膀胱内に細菌が残ってしまい、膀胱炎は完治しないまま、菌が増殖し、再び症状が出てきてしまいます。
また、途中で薬の服用をやめてしまったり、抗菌薬を決められた通り(日数や1日の服用回数など)に服用しなかったりした場合も同様です。
補足
抗菌薬は人によっては、下痢やアレルギー症状などがみられる方もいますので、その際は無理せず医師へご相談ください。薬剤を再度選定し処方いたします。
細菌感染が原因で起こる膀胱炎は、皆さまが何気なくしている生活の動作・習慣が発症の誘因となる場合もあります。
主な要因として、以下をお示しいたします。
などが挙げられます。
細菌が侵入しやすくなったり、細菌が膀胱内で増殖しやすくなったりして感染・発症する可能性が高まります。
また、疲労やストレス、風邪などにより体の抵抗力が落ちているときは膀胱炎が発症しやすくなります。
このような生活習慣が発症の誘因になり、再感染をきたすことで膀胱炎の発症を繰り返すことがあります。
女性の方へ
上記に加え、女性の膣内には「デーデルライン桿菌」という乳酸菌(善玉菌)が常に存在します。
膣内を強い酸性に保ち、雑菌などが増殖するのを防いでいます。(自浄作用と言います)
生理中や妊娠中、閉経後は女性ホルモン(エストロゲン)の低下によって善玉菌が減少することで膣内で細菌が増殖しやすい環境となってしまい、その細菌が膣から尿道口に入り込み、膀胱炎にかかりやすくなるとされています。
膀胱炎は単独で起こるだけでなく、その他の病気(尿路系の基礎疾患)が潜んでおり、これらが原因で起こることもあります。
主な病気には以下が挙がります。
などが挙げられます。
病気が原因となっているので、その病気をしっかりと治療しない限り、膀胱炎が再発する可能性があります。よって、原因となる病気の有無を調べ、正しい治療を行うことが大切となります。
膀胱炎の原因のほとんどは、膀胱への細菌感染です。
感染する細菌の大半(約80%)は大腸菌とされています。
細菌は尿道口と呼ばれるおしっこの出口から体内に入り込み、尿道を通って上部に位置する膀胱へと移動してきます。
本来、そのような細菌はおしっこをすると(排尿)、一緒に外に出て洗い流されるのですが、疲労やストレスの蓄積、体調不良、妊娠などによって免疫力が低下していると、感染・発症するきっかけとなります。
女性の方へ
また、膀胱炎には男性に比べて女性の発症率が圧倒的に高いという特徴があります。
理由の一つは、男性に比べて女性は尿道が短いので、侵入した細菌が膀胱まで達しやすいというからだの構造的な違いが挙げられます。
また、細菌のいる膣や肛門が尿道口と近い位置にあることも細菌が侵入しやすい理由の一つと考えられます。
女性が膀胱炎に罹りやすい時期としては、幼少期を除くと「性的活動期(若年層)」と閉経後の「更年期」の2回ピークがみられる傾向にあります。こういった背景もあり、女性は生涯で2回は膀胱炎にかかるともいわれております。
他にも、以下のような要因で膀胱炎はさまざまな原因で発症します。
日頃からこうした点に注意することで、膀胱炎を予防できます。
ストレス(精神的な負担)がかかった状態では、免疫力を低下させる大きな原因として挙げられます。
免疫力が落ちると風邪をひきやすいというのはよく知られていますが、免疫力が落ちると尿トラブルもきたしやすいといわれています。
過度のストレスを抱えると、ホルモンのバランスが崩れます(※とくに女性は注意が必要です)。
すると、免疫力や抵抗力が低下し、入ってきた細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎を発症します。
また、漢方では、約2000年以上前から「免疫力と尿トラブルに密接な関係がある」と考えられており、免疫力が落ちると風邪などの感染症だけでなく、膀胱炎などの尿トラブルにも気をつけて養生するようにと伝えられてきました。
ストレスを感じると、トイレが近くなる、残尿感を感じる、なかなか尿が出ないなどの症状に心当たりのある人は注意が必要です。
以下のような症状が出ている際は、膀胱炎の可能性が疑われるため、一度泌尿器科クリニックへ受診してください。
膀胱炎の主な症状
などの症状があらわれます。
このような症状はほかの泌尿器系の病気でもあらわれることがありますが、これらの症状に加えて高熱、背中や腰の痛み、寒気、吐き気、体のだるさなどの症状が伴う場合には腎盂腎炎を併発していると思われますので、注意が必要です。
膀胱炎の主な原因は細菌感染で、何らかの形で細菌が尿道口から侵入して膀胱に到達して膀胱内の粘膜が炎症を起こします。
また、細菌が腎盂と呼ばれる部位にまで達する場合があり、これを腎盂腎炎といいます。
腎盂腎炎が進行し、血液中に細菌が侵入すると敗血症となり命に関わることもあります。そのため、早急に受診するようにしてください。
問診でお話をおうかがいし、症状や背景を確認し膀胱炎が疑われる場合、必要な検査を検討します。検査には以下のようなものがあります。
一般的に尿検査と言われる検査です。尿を採取して、試験紙を用いてその成分を調べる検査で、健康診断などでも行われる一般的な検査です。
正常時にはあまり検出されないタンパク質の量や潜血反応(血のまじり)の有無などを中心に調べます。
当院では、尿定性検査と併せて行うことが多い検査です。お預かりした尿を遠心分離器にかけて、沈殿した固形成分を顕微鏡で観察する検査です。
赤血球や白血球、上皮細胞、円柱細胞などの成分の量・形から、関連部位の異常の有無などが確認できます。この検査では肉眼で確認しきれない血尿の有無(血尿と認められる赤血球の数)も確認できます。
尿沈渣検査では、感染・炎症によって尿とともに排出されやすくなる白血球の数や細菌の有無などを中心に調べます。
尿に含まれて排出された細菌を培養する(原因菌を特定できる量まで増やす)ことで、膀胱炎の原因菌を特定する検査です。この検査により原因菌を殺菌する抗菌薬(抗生物質)の選定をし、患者さまにあったお薬を処方します。培養は特殊な培地で数日かけて行いますので、結果が判明するまで数日~1週間程度かかります。
膀胱炎は基本的に細菌感染が原因となることが多いため、主に抗菌薬の内服によって治療を行います。
原因菌と抗菌薬の相性が悪い場合は完治せず、再び症状が出てくることがあります。
そのため、薬剤感受性検査では特定された膀胱炎の原因菌に対して効果のある抗生物質の種類を特定します。
患者さまへ
近年では薬剤耐性菌と呼ばれる抗生物質の効かない細菌の出現もあり、きちんと検査をしておくことが重要です。
また、ご本人様とお薬の相性が合わない場合もあり、下痢症状など副作用がみられることがあります。お薬はしっかり出した分を飲み切ることは大切ですが、このような副作用がみられる際は処方薬を再検討する必要がございますので、些細なことでもご相談ください。
血液検査をしても膀胱の中の様子がわかるわけではありません。
血液検査を行う場合では主に、全身炎症の程度、臓器の機能低下の有無を調べます。膀胱炎の他に関連疾患の可能性がないかも確認します。
膀胱内の残尿量を測定し排尿障害の有無を確認したり、膀胱の容量(大きさ)を確認します。また、膀胱内の腫瘍の有無や、膀胱結石の有無などその他の疾患の可能性について調べます。頻尿や残尿感などの関連症状がある場合や、膀胱炎を繰り返す場合などに行います。
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
---|---|---|---|
尿検査(尿定性・沈渣検査) ※判断料含む |
約90円 | 約170円 | 約260円 |
血液検査(採血) ※判断料・手技料含む |
約600円 | 約1,200円 | 約1,800円 |
尿培養検査 ※判断料含む |
約320円 | 約640円 | 約960円 |
薬剤感受性検査 | 約170~330円 | 約340~660円 | 約540~990円 |
腹部エコー検査 | 約530円 | 約1,060円 | 約1,590円 |
(税込表記です)
早めに治癒させるためには、泌尿器科専門医へ相談し医療機関で処方薬をもらうことが最善とされています。
市販薬は、一般的に生薬を主成分とし、利尿作用・血流改善など体の機能を高めて細菌を早く出すように働きかけてくれます。
また、市販薬は漢方製剤や生薬成分を使用したものがほとんどです。
ポイント
そのため、医療機関で処方されるような抗菌薬や抗生物質などは販売されていません。
また、医療用医薬品だけで使用される成分も多くあるため、症状の改善がみられない場合や頻繁に繰り返す場合は医師の診察を受ける必要があります。
医療用医薬品には、生薬由来ではないものも多数ありますが、一般用医薬品ではほとんどが生薬由来の成分によるお薬になります。
症状もさまざまで、性差もあるため効果的な薬もそれぞれ変わってきます。
膀胱炎に対して、現在は抗菌薬の一般用医薬品が存在しないため、漢方薬を使用しつつ水分を摂って尿量を増やし、雑菌を洗い流すなどの工夫も必要になります。
市販薬で改善しなかったり、症状が続いたり、悪化するなどの場合は、他の病気も疑われますので、気になる点ございましたら、当院医師へご相談ください。
膀胱炎の治療は現在、大腸菌感染をはじめとした細菌感染が多いですが、その約90%はしっかりとお薬(抗菌薬など)を服用すれば治る病気です。
(※通常は重篤化せず、クリニックの外来診療で診る疾患といえます。)
もちろん、患者さまご本人の症状・病歴やお薬の服用歴・体質によっても治療法が変わってきます。
最近は通常の抗生物質が効かない薬剤耐性菌によるものが増えてきています。
膀胱炎が疑われる症状がありましたら、できるだけ早く受診してください。
膀胱炎は再発を繰り返す場合が多くなっています。
抗生物質を服用してすぐ症状が改善しても、膀胱内の細菌は残っている可能性があるため、医師に処方された日数分をしっかりと飲み切るようにしてください。
また、膀胱炎が悪化すると尿管という管を通じて細菌が腎臓に到達し、腎盂腎炎になることがあります。
膀胱炎の症状に加えて、急激な高熱や寒気、腰の痛みなどの症状がみられることもあり、症状が重いと入院が必要になったり、重篤化したり、命に関わることもあります。
気になる症状を感じたらすぐに受診をしてください。
【抗生物質】感染症の原因菌の増殖を抑え、殺菌するお薬
一般名(お薬の成分) ※ジェネリック医薬品のお名前にもなります |
商品名(例) | 服用期間(目安) | |
---|---|---|---|
ニューキノロン系抗生剤 | レボフロキサシン シプロフロキサシン シタフロキサシン |
クラビット錠 シプロキサン錠 グレースビット錠 |
3日 |
セフェム系抗生剤 | セファレキシン セフカベンピボキシル |
ケフレックスカプセル フロモックス錠 |
5~7日 |
ペニシリン系抗生剤 | クラブラン酸アモキシシリン | オーグメンチン配合錠 | 7日 |
ホスホマイシン系 | ホスホマイシン | ホスミシン錠 | 2日 |
ペネム系 | ファロペネム | ファロム錠 | 7日 |
ST合剤 | スルファメトキサゾール・トリメトプリム | バクタ配合錠 | 3日 |
痛みや炎症を抑えるお薬
一般名(お薬の成分) ※ジェネリック医薬品のお名前にもなります |
商品名(例) | 服用期間(目安) |
---|---|---|
ロキソプロフェンナトリウム(錠剤) | ロキソニン錠 | 1日~2日(痛みを感じるとき) |
アセトアミノフェン(錠剤) | カロナール錠 | 1日~2日(痛みを感じるとき) |
ジクロフェナクナトリウム(錠剤) | ボルタレン錠 | 1日~2日(痛みを感じるとき) |
症状の出始めの時期は、早期の場合それほど細菌が増えていない状態です。
この状態は、正常な免疫力がある方は、適切に対応すれば薬を飲まなくても自然治癒が望める場合もあります。
ポイント
薬を飲んでも飲まなくても、膀胱炎の治療では水分をとることが重要です。
水分をしっかりとるだけでも、軽い膀胱炎なら治る場合があります。
膀胱炎を発症すると、何度もトイレに行きたくなりますが、それは少しでも尿と一緒に細菌を体外に出して膀胱炎を治そうとする体の働きです。
そのため、少しでも尿意を感じたら、我慢せずトイレに行くことも大切です。
この他、以下のポイントも押さえておきましょう。
おなかが温まると血流が増え、細菌と戦う白血球などの成分がたくさん膀胱に届いたり、酸素や栄養が膀胱に届きます。
そのため、炎症を起こした部分の修復を早く行うことができます。
免疫力を下げないために、寝不足や体の疲れが残らないよう生活習慣を見直し、とにかく体を休めることも重要です。
漢方薬には「菌を殺す効果」はありませんが、膀胱粘膜の状態を整えることで膀胱炎の治療を助ける効果があります。
膀胱炎治療を助ける主な漢方
各々とっても効果を発揮します。抗生剤は菌を殺す効果のみで、炎症で荒れた膀胱壁(粘膜)の修復はできません。漢方薬は、膀胱壁の修復を助けますので、併用いただくよう処方することがあります。市販薬で出ているものもありますので試してみるのも良いかもしれません。
膀胱炎は以下の症状・状態をきっかけとして発症することもあります。
そのため、生活習慣の改善も大切です。
また、ウォシュレットやビデを、トイレを済ませた後に使用するなど、間違った使用方法により、細菌を尿道に押し込んでしまう場合もあります。
そのため、膀胱炎が繰り返される場合は、ウォシュレットやビデの使用を中止することも検討してください。
膀胱炎をしっかり治療する上で以下を意識して治療に専念していただければ幸いです。
細菌感染が原因で起こる膀胱炎は、トイレを済ます際の注意や、日常生活の小さな心がけから予防できます。
女性の場合、排便後に後ろから前へ拭いてしまうことで、大腸菌が尿道に付着しやすくなります。
何気ない習慣を変えることは簡単ではありませんが、トイレットペーパーは前から後ろへ拭くようにすると良いでしょう。
生理時のナプキンや、おりものシート、下着をこまめに交換したり、セックス前後はシャワーを浴びたりするなど、常に外陰部の清潔を保つようにすることが大切です。
日頃から外陰部を清潔に保つことで、細菌の増殖を抑えることができます。
便秘になると、多くの大腸菌が体内に留まります。そして、排便時に通常よりも多くの大腸菌が排出されることになります。
その分、感染のリスクも高くなるので、日頃から便秘を改善するために、運動やマッサージをする、食べ物に気を付ける、便秘薬を使用するなど、快便を図るよう心がけてください。
忙しい日常生活を送る方では、トイレへいくことを忘れてしまうなど後回しにしがちです。
しかし、トイレを我慢してしまうことで、膀胱内に尿と一緒に細菌も長時間停滞させてしまうことになります。
お仕事でお忙しい方も、細菌増殖を防ぐためにも、こまめにトイレに行くことを大切にしてください。
忙しくて水分摂取が疎かになったり、トイレに行く時間を割くため水分摂取を我慢したりすることがあります。
膀胱内の細菌を体外へ排出させるため、水分摂取はしっかり行いトイレへ行くようにしてください。
また、冬は喉が渇きにくく、水分補給を怠りがちです。
水を飲まないと、尿の回数が少なくなりますので、冬場も水分摂取をこまめに行ってください。
膀胱内の血流を良好に保つため、下腹部を冷やさないようにすると良いです。
下腹部を冷やさないことで、抵抗力を高めることにもつながります。
また、ストレスや疲労を溜めないことは、免疫力アップにもつながります。
「膀胱炎」に関連する病気として「腎盂腎炎」が挙げられます。
腎臓は、血液中の老廃物や有害物質をろ過して尿を作ったり、排泄したりする役割を担っています。
腎臓の中で尿を溜めておく部分を腎盂といいますが、腎盂やその周囲の組織が細菌に感染して発症するのが腎盂腎炎です。
腎盂腎炎はほとんどの場合、尿の出口から侵入した細菌が、尿道、膀胱、尿管とさかのぼって腎盂にまで達することで発症します。
また、女性は尿道が短く、大腸菌などが存在する肛門と距離が近いため、腎盂腎炎は女性に多い病気とされています。
腎盂腎炎の多くは、薬による治療で治癒しますが、細菌が血流に乗って全身に広がってしまうと、命に関わるほど重症化する場合もあります。
「膀胱炎」に間違われる病気として次のものが挙げられます。
心因性多飲症とは、不安やストレスが原因で水をたくさん飲んでしまう病気です。
ストレスや緊張からのどが渇き、必要以上に水分を取り多尿になるため、頻尿、尿意切迫感(尿を我慢できない)などの症状があります。
アルドステロンは副腎から分泌され、体内に塩分と水を溜めこみ、カリウムの排泄をうながして血圧を上昇させるホルモンです。
このホルモンが過剰に分泌された結果、高血圧、むくみ、カリウム喪失などを起こす病気がアルドステロン症です。尿濃縮力が低下することで、多飲多尿をきたすことがあり、頻尿になる場合があります。
偽アルドステロン症とは、血中のアルドステロンが増えていないのに、アルドステロン症の症状があらわれる病気です。
主な症状は、手足の力が抜けたり弱くなったりする、血圧が上がるなどですが、頻尿など膀胱炎に似た症状もあります。
放っておくと、将来的に生命に関わる深刻な状態になりかねない病気ですので、些細なことでも気になることがあれば医師へご相談ください。
脳や脊髄・神経に病変があると尿意切迫感、頻尿、夜間頻尿(夜に尿のためにトイレに起きる)などの症状をきたすことがあります。このように排尿に関わる神経系の障害によって生じる失禁や頻尿などの排尿障害の総称を「神経因性膀胱」と言います。
原因となる神経の病気としては、脳・神経腫瘍、脳梗塞、脳出血、パーキンソン病などの変性疾患、帯状疱疹などの末梢神経疾患など多岐にわたります。
放っておくと、将来的に生命に関わる深刻な状態になりかねない病気もありますので、排尿に少しでも気になることがあればすぐに受診してください。
膀胱腫瘍とは、膀胱に発生する腫瘍です。良性のものは少なく、ほとんどが悪性腫瘍(膀胱がん)です。
腫瘍が大きくなってくると、頻尿、排尿痛、残尿感があるといった症状のほか、尿路感染、尿管口の閉塞による腎機能の不全なども起こります。また、血尿がみられることがあります。
放っておくと、将来的に生命に関わる深刻な状態になりかねない病気ですので、少しでも気になることがあればすぐに受診してください。
過活動膀胱とは、膀胱に十分尿が溜まっていなくても、自分の意思とは関係なく膀胱が収縮してしまい、結果として急に我慢できないような尿意が起こる病気です。
頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁、夜間頻尿などの症状があります。
すぐに将来的に生命に関わる深刻な状態になる病気ではありませんが、症状が続いたり悪化したり、少しでも気になることがあればすぐに受診してください。
女性は膀胱炎に罹りやすく、20代~40代の女性の4人に1人が、その初期症状を経験するほど日常に潜んでいる病気です。
また、生涯で2人に1人が膀胱炎になると言われているほど女性によくある病気です。
繰り返しやすいと言われている膀胱炎ですが、1年以内に膀胱炎になった方の約3人に1人は2回以上発症している調査結果もあります。