睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中に何回も呼吸が止まったり、ぐっすり眠ることができない病気です。10秒以上の気流の停止を無呼吸といいます。
潜在患者は人口の2〜3%といわれます。 50歳代の女性で10%弱、男性で10〜20%程度と言われています。*1)
ご本人が自覚していなくても、周りの方から上記を指摘されて見つかることもあります。 適切な治療により、日中の眠気、頭痛などが改善されることがわかっています。
下記に示すような場面で、眠くなったり、実際に眠ってしまうことがありますか? 最近の平均的な状態についてお答えください。そのような状態になったことがなくても、もし仮にそうした場面になったらどうなるかを考えてご記入ください。
症状 | 決して眠くならない | 稀に眠くなる | 時々眠くなる | 眠くなることが多い | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 座って読書をしている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
2 | テレビを見ている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
3 | 会議や劇場などの公の場で座って何もしていない時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
4 | 他の人が運転する車に乗っている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
5 | 午後に横になって休息をとっている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
6 | 座って人と話している時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
7 | 昼食をとった後、静かに座っている時 (アルコール摂取していない場合) |
0 | 1 | 2 | 3 |
8 | 車を運転中、交通渋滞で2~3分停止している時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
合計 |
|
閉塞性と中枢性に分けられます。最も多いのは閉塞性。
呼吸が止まることにより、一時的に体内の酸素濃度が低下すること、胸腔の圧力が高まること、頻回な中途覚醒などにより、交感神経が活性化することから心臓・血管への負担が強まり、下記の合併症の発症・悪化に関連します。また、一方で、心不全が睡眠時無呼吸症候群の悪化にも影響することがわかっています。
命に関わる自動車衝突事故の15〜33%において居眠り運転が関与していると報告されています。 睡眠時無呼吸症候群のある方では日中の突然の眠気をきたしやすく、交通事故の発生率が健常者の約7倍とも言われています。
睡眠時無呼吸症候群を疑った場合、携帯用モニターを用いた簡易検査を行います。携帯用モニターは腕時計型の機器本体、指先のセンサー、鼻に装着するチューブで構成されています。ご自宅での睡眠時にこの機器を装着することで睡眠中の呼吸状態や血液中の酸素飽和度などを同時に測定します。また、睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数(無呼吸低換気係数AHI:apnea hypopnea index)を調べます。
5≦AHI<15を軽症、15≦AHI<30を中等症、AHI≧30を重症とします。 ただし、AHIが軽症でも日中の過度の眠気などを伴う場合は閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断されます。また、無症状でもAHIが5以上で高血圧症や狭心症などの心疾患、2型糖尿病などの疾患がある場合も閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断可能です。
簡易検査によって、AHIが 40以上ある場合は重症睡眠時無呼吸症候群と診断し、CPAP療法という機械を用いた治療の適応となります。 AHIが5~40未満(軽~中等症睡眠時無呼吸症候群)の方では、1泊2日程度で睡眠中の脳波や血圧、心電図検査などを同時に行うポリグラフ検査(精密検査)での評価が必要です。精密検査が必要な場合は検査入院可能な近隣の医療機関へ紹介いたします。精密検査でAHIが20以上の場合にはCPAP治療の適応になります。
CPAP装置よりマスクなどを介して鼻に空気を送り、閉塞性した上気道を押し広げることで、酸素不足を解消します。 睡眠の質を向上させ、睡眠時無呼吸症候群が招く高血圧や狭心症、心筋梗塞などの 循環器疾患などの合併症を予防することができます。副作用はほとんどありませんが、のど・鼻の渇きや、マスクの締め付けすぎによる痛み、マスク装着の違和感などが生じることがあります。
CPAP装置は、当院からレンタルいたします。毎晩、就寝前にご自身で装着をしていただきます。治療には健康保険が適用されますが、定期的な(1ヶ月に1回)外来受診が必須です。 治療費は月々5000円ほど(診察費、レンタル費用含む。医療保険3割負担の場合)かかります。(機器の保守管理やマスク・エアチューブなど治療に必要な消耗品の供給は医療機器供給会社が対応いたします。)
CPAP療法は睡眠時無呼吸症候群の治療として最も多く行われている治療法です。使用したその日から睡眠不足などの症状の改善が期待できます。しかし、根本的な治療ではないため、使用を中止してしまうと、再度症状がぶり返してしまいます。よって、根気よく治療を継続することが重要です。
睡眠時無呼吸症候群の治療で使用するマウスピースはスリープリントとも呼ばれ、装着することで下顎を前方に引き出した状態で上下の顎を固定します。その結果、舌の沈下も防ぎ気道を確保し、呼吸を改善させます。CPAPで治療できない場合や比較的軽い無呼吸症候群(軽度~中度)に適応されます。他の治療方法に比べると身体に負担が少なく、装着することで効果が早く現れやすい治療方法です。小さいので持ち運びできるため旅行の際も使用できますし、慣れると自然に睡眠がとれます。 睡眠時無呼吸症候群の診断書があれば、保険適用になり歯科医院で1~2万円程と費用を抑えて作ることができます。保険適用のマウスピースは上下一体型のもので、より自分の骨格にフィットしたものを使用したい際は自費診療となりますがより快適なマウスピースを製作することも可能です。ただし、睡眠時無呼吸症候群のためのマウスピースは専門性が高いので対応できる歯科医院で対応してもらう必要があります。
気道閉塞の原因がアデノイドや扁桃の肥大であると明らかな場合などは、耳鼻咽喉料医による手術が必要となることがあります。 最も一般的な手術は、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)です。この手術は、口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除して、気道を広げる手術です。その他、いびきに対してレーザーによる口蓋垂軟口蓋形成術、鼻中隔(鼻の内部)の手術などの方法があります。詳しくは、専門の耳鼻咽喉料医にご相談ください。
体重が10%増量することで中等度の睡眠時無呼吸症候群に至るリスクは約6倍になるとも言われており、肥満を改善することも大切です。
アルコールは咽頭の筋肉を緩め、気道の閉塞を引き起こし睡眠時無呼吸症候群が悪化する可能性が言われています。
喫煙により上気道の炎症が起きることで睡眠時無呼吸症候群が悪化するという報告があります。
仰向けで寝ると舌や咽頭の上側の筋肉や軟口蓋が落ち込みやすくなり、空気の通り道(気道)が狭くなります。したがって、仰向けよりも横向きで寝ることで無呼吸が軽減される方もいらっしゃいます。
当院ではご自宅での簡易検査が可能な携帯用モニターの貸し出しを行なっております。ご自身にて就眠前に検査機器を装着していただきます。 貸し出し期間は原則1泊2日にてお願いしております(祝休日を除く)
症状のある方は保険診療として検査可能です。検査にかかる費用は3割負担で約3000円程度です。
機器の貸し出しの都合もあり、予約優先となります。上記症状があり、初診時当日より検査機器の貸し出しを希望される方はお電話にてご予約ください。(当日でも、対応可能な場合もございます。)まずは検査のご相談・診察のみであればWebからのご予約も可能です。
また、簡易検査の結果、CPAP療法が必要となった方には、治療導入も可能です。 ご不明な点などございましたらお気軽にご相談ください。