尿道炎
尿道炎
尿道炎とは、おしっこ(尿)の通り道である尿道に、病原菌が感染し、炎症が引き起こされる病気です。主に性行為により感染するクラミジアや淋菌などが原因菌のことが多いですが、
尿道炎=必ずしも性感染症(STI:Sexually Transmitted Infection)であるとは限りません。
尿道炎は男性に多く、以前は性風俗店の利用などで感染する場合が多いといわれていましたが、最近は身近なところでの無症状の感染者も増えており、幅広い年齢層、患者層で感染が確認されています。
女性は男性と比較すると尿道が短く、女性の場合、尿道炎は膀胱炎と同時に発症するため、尿道炎のみでは診断されません。また、性行為を介した感染の場合、女性では子宮頸管炎として診断されるケースが多くなります。
潜伏期間は、淋菌感染の場合2~7日間で比較的早く症状が現れます。クラミジア感染の場合1〜3週間で、症状がないこともあるため感染時期が分からないこともあります。
また、オーラルセックスなどでも感染することがあり、尿道の他、のど(咽頭)や眼などにも感染し炎症を起こすこともあります。
補足
非クラミジア性非淋菌性尿道炎は、クラミジアと淋菌が検出されない尿道炎のことで、大腸菌・腸球菌・マイコプラズマ・ウレアプラズマなどの細菌、ウイルス、真菌、トリコモナスなどの原虫などが原因となります。
尿道炎は、誰にでも起こりうる病気ですが、20~40代に多いとされています。また、性行為の低年齢化により、10代でも感染が広がるケースも見られます。
このような方は、尿道炎になるリスクは高いです。
尿道炎のよく見られる症状
などがあります。
症状を感じる部位
尿道の奥や尿の出口などさまざまです。人によっては、症状がまったく出ないケースもあります。
排尿痛も痛み方には個人差があり、尿が通過したときに焼けるような激しい痛みを感じることもあれば、鈍い痛みを感じることもあります。
尿道から無色の分泌物や白色や黄色の粘り気のある膿のような分泌物がみられます。このような症状が確認できる際は泌尿器科クリニックへの受診を推奨いたします。
尿道炎が起こる原因は、性行為を介してパートナーから病原体がうつることで発症する「性感染症」と大腸や肛門に潜んでいる細菌が尿の出口(尿道口)から侵入して炎症が起こる「異所性感染」の2種類に分けられます。
性感染症は、クラミジアや淋菌、マイコプラズマ、ウレアプラズマなどの細菌が主な原因菌とされています。
近年では、オーラルセックスによって、病原菌が咽頭などに感染している例もあり、喉から陰部などの感染経路が多くなっています。
また、性行為等で、尿道に物理的な強い刺激がかかってしまうことで粘膜が傷つき、傷口から皮膚や粘膜の細菌が侵入し、炎症を引き起こすこともあります。
会陰部(外陰部から肛門までの部位)の不衛生な状態が影響すると考えられています。
尿道炎が疑われる症状、排尿時の痛みや違和感がある場合は泌尿器科受診のタイミングです。
放置していると、後々に尿道が狭くなってしまい排尿に支障がでることがあります。
尿道炎といっても性行為が原因の場合と、そうではない場合があります。
そのため、性行為歴がなくても、症状が疑われる場合は早めの受診が大切です。
また、自覚症状がなくてもパートナーが性感染症と診断された場合は、同時に感染している可能性が高いため、一度検査をすることが重要です。ご本人さまだけでなくパートナーやご家族さまの安心のためにもご検討ください。
尿中の白血球や細菌の存在を確認します。
このとき、尿道に膿などの分泌物がみられるときには、グラム染色を行い、細菌の形を顕微鏡で確認する検査、細菌の培養検査を行うことがあります。
また、クラミジアや淋菌など一部の細菌感染が疑われる場合は、核酸増幅法と呼ばれる検査で感染を確認します。
核酸増幅法ではクラミジアなどの細菌を95%の確率で、診断することができます。
ただれや盛り上がっているなど外陰部に目に見える症状が認められる場合は、目で見ての診断を行うことがあります。
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
---|---|---|---|
尿検査(尿定性・沈渣検査) | 約90円 | 約170円 | 約260円 |
尿培養検査 | 約170円 | 約340円 | 約510円 |
尿クラミジア・淋菌同時核酸検出法 | 約280円 | 約560円 | 約840円 |
血液検査(一般的な採血項目)※判断料込 | 約600円 | 約1,200円 | 約1,800円 |
(税込表記です)
尿道炎の治療は、主に原因菌に対する抗生物質の投与を行います。
また医師の指示に沿って水分をたくさんとってください。
抗生物質を服用しても治りがよくない場合には、抗生物質の種類を変更します。
尿検査にてクラミジアや淋菌が陽性であった場合、治療終了後に完治したかどうか再検査する必要があります。
尿道炎の予防には、感染予防のためコンドームを装着することの重要性や、オーラルセックスだけでも感染することをパートナーにも理解してもらうことが必要です。
感染症の原因菌の増殖を抑え、殺菌するお薬
一般名(お薬の成分) ※ジェネリック医薬品のお名前にもなります |
商品名(例) | 服用期間(目安) | |
---|---|---|---|
ニューキノロン系抗生剤 | レボフロキサシン シタフロキサシン |
クラビット錠 グレースビット錠 |
3日 |
マクロライド系 | アジスロマイシン | ジスロマック錠 | 1日 |
テトラサイクリン系 | ミサイクリン ドキシサイクリン |
ミノマイシン ビブラマイシン |
7日間 |
セフェム系 | セフトリアキソン | ロセフィン注(点滴) | 1日(点滴) |
「尿道炎」に関連する病気として次のものが挙げられます。
淋菌以外の原因菌の感染による尿道炎の総称です。代表的なものとしてクラミジア尿道炎が挙げられます。
感染から症状発症までの潜伏期間が1~3週間と長く、比較的ゆっくり発症します。
尿道の痛みは軽いか、ほとんどありませんが、軽いかゆみを覚える場合もあります。
分泌物は漿液性(薄黄色で透明)で、量もあまり多くありません。
マイコプラズマ、ウレアプラズマといった細菌感染による尿道炎もクラミジア尿道炎とほぼ同様の症状があらわれます。
膣トリコモナス原虫による尿道炎は、尿道の痛み、軽いかゆみ、膿分泌などの症状をきたす場合もありますが、一般的には無症状の場合が多いです。
感染から約1週間以内に急性尿道炎が発症します。
淋菌性尿道炎の症状は、外尿道口からの濃厚な膿の排泄、初期尿道痛や、外尿道口の発赤・腫れなどの症状があります。クラミジア尿道炎に比較し症状が激しいのが特徴です。
クラミジア、淋菌が尿道口から逆行性に侵入し、前立腺炎や精巣上体炎を起こすこともあります。また、不妊症の原因となることがあります。
淋菌感染症とは
淋菌感染症は性感染症のなかでも頻度の高いものです。
男性では尿道炎、精巣上体炎、女性では子宮頸管炎などを発症します。咽頭や結膜、直腸に感染することもあります。
近年では、テトラサイクリン耐性淋菌、ニューキノロン耐性淋菌も次々に現れ、多くの抗菌薬に耐性をもつ薬が効きづらい淋菌感染症が問題となっています。
トリコモナス腟炎は、腟トリコモナス原虫の寄生によって起こる腟炎です。
この腟炎は、感染者の年齢層が他の性感染症と異なり、非常に幅広く、中高年者でもしばしば見られます。感染経路は主に性行為によりますが、それ以外に、衣類、タオル、浴槽縁、便器、検診台などを介しての感染もあります。よって性行為経験のない女性や幼児でも感染者が見られます。
また、分娩時に母体からの産道感染もみられますが、新生児感染症はごくまれとされています。
症状は20~50%が無症状と言われますが、泡状で悪臭の強い帯下、外陰部の痛み、痒みの症状が現れることがあります。
腟だけでなく、尿道、膀胱などにも感染し、尿道炎、膀胱炎、外陰炎などを合併することもあります。大腸菌などの細菌感染の合併も多いといわれています。
封入体結膜炎は性感染症(性病)のひとつとして最近注目されています。
尿道炎、子宮炎症などの性器クラミジア感染症が、性行為、手指などを介して眼に感染するもので、成人では結膜炎を起こします。また、新生児が母親の産道感染を介して結膜炎を発症することもあります。
トラコーマは、急性の結膜炎症状で始まり、後期には角膜(黒眼)が混濁してしまう病気です。
かつて失明の主要な原因でしたが、現在では世界的に激減しています。
男性がクラミジアに感染すると初期では尿道炎の症状があらわれます。
尿道炎は、膿が出たり、排尿時の痛みが生じたり、かゆみが主な症状で、性器が多少赤くなることもあります。
淋病と似ていると言われていますが、一般的には、淋病のほうが発症までの期間が早く、症状も激しいと言われています。一方、クラミジアは感染していることに気づかない場合も多く、そのまま放置してしまい、前立腺炎を引き起こし、排尿時の痛みや下腹部の痛みを呈することがあります。そして精巣上体炎なども引き起こし、精巣(睾丸)が腫れたり、発熱することもあります。
また、クラミジアと淋病は咽頭(のど)に感染することもあります。
オーラルセックス(口腔性交)やディープキスをすることによって口腔内に菌が侵入し、咽頭(のど)に感染します。淋病もクラミジア感染症も「喉の奥の痛みや風邪のような症状、扁桃腺炎等」をきたす点でも、似ている病気と言われています。
クラミジア感染症と淋病は、見た目ではどちらの病気かを判断することは難しい病気です。また、20~30%で同時に感染しているケースが見られます。実際に診断するには尿、分泌物による検査が必要です。
そのため、体にこのような異変があらわれ、性病と疑われる症状がある場合は、受診する必要があります。
感染者数がもっとも多い性感染症として、クラミジアが挙げられます。
クラミジアはクラミジア・トラコマティスという細菌によって生じます。
国内感染者数は40万人以上とされており、若い世代の感染率がとくに高く、性体験がある高校生に対する調査では、男性6.7%・女性13.1%という結果が出たこともあります。
また、1回の性行為で30~50%に感染するという調査結果もあり、感染率の高い病気です。
男性は、かゆみや分泌物、女性はおりものの増加などの軽い症状が起こることもありますが、症状がないケースもかなり多いため、感染が拡がりやすいとされています。